報道(2)

障害者施設で恐るべき事件が起きた。神奈川県相模原市の障害者施設に男が侵入し19人が殺害されるという事件である。詳しく報道されたので、逐一事件の概要をテレビで見た。勿論、驚愕以外の何物でもなかったが、報道を聞いていて、第一に浮かんだ疑問は、この施設の防犯体制はどうなっていたのだろうか、という点である。たしか、40人以上の障碍者の世話をするという施設である。又、見たところかなり大規模な施設である。報道では、賊が窓から侵入したと言う事であったが、このあたりから解せないのである。これだけの施設であり、しかも入居者は身体障碍者と言う事になると、いろいろと不測の事態も起こるだろうし、当然、防犯体制の問題が出てくる。防犯だけではなく、例えば防火対策なども必要だろう。とにかく、第一に浮かんだ疑問は、これらが一体どうなっていたかである。当然ながら、これらは単に紙の上の体制だけではなく、年に一度くらいは職員の共同訓練なども行われていたはずだ。ところが、報道を聞いていてこれらの点が全く取り上げられていないのだ。

と思いながら注意してみていると、報道の2日めになったって、驚くべきことが報道された。これによると、実は、職員のうち一人は何とか賊の目からのがれ、机の下に隠れていたようであり、その職員が、何とスマホのlineをつかって、非番で休んでいた職員に連絡したというのである。なにか、「やばいことが、起きている。すぐ来てもらえないか」というメッセージをlineで送ったらしい。(画面にはスマホを操作する画像が出ていた。こんな画像は実際はあるはずもないがーー。)これには、本当に驚いた。報道では、このlineメッセージを読んだ非番の同僚が、おかしいと思って折り返し連絡を取ろうとしたが出来ないので、やむなく110番連絡をしたーそしてこれが警察への第一報となったというのである。職員の内、ほとんどは、なにかコンビニで売っているような拘束バンドで身動きが出来ないようになっていたようであるが(コンビニで売っているような拘束バンドで職員の多数が縛り付けられ、かなりの時間に亘って電話も取れなかったというのも不思議な気もするが、これは別として)、幸いと言うか偶然というかひとりは逃げおおせていたのだ。とすればその職員のやるべきことの第一は110番連絡のはずだ。lineのチャットではない。これがどうしてもわからない。NHKの報道を、その後も何度も見、フォローしたが、この点についての報道は全くなかった。これだけの施設である。当然何らかの防犯体制は日頃から必要であろうし(実際、警備員もいたようだ)、必ずしも犯罪ばかりでなく、施設内の様々なトラブルもあるはずだ。不測の火事が起きる場合も当然予想される。これらを想定してある程度の定期的な訓練や点検も行われていたはずだーーと思うがこれらは一切何も行われていなかったのだろうか。この事件の第一報が何とチャットとは!

この事件ついては、その後も繰り返し報道が行われたが、上に述べた点に関する報道は驚くべきことに(と筆者は思うのだが)、一度もなかった。そして、報道の主眼は、障碍者の命を思いやるべきだとか、障碍者の心を支えていくべきだと言うような点ばかりである。勿論、これについては、全く異論はないが、この事件で学ぶべきことはそこではない。実際、この事件が、現在の社会の動きやその思想(考え方)の流れの中で、なにか、障碍者を差別するような動きがあり、報道がこれらの社会的な動きに警鐘を鳴らそうとしたのなら、わからないでもないが、いま、日本の社会でこのような動きがあるとは思えないし、この事件は明らかに一つの犯罪行為である。

これだけの施設を管理していて全く防犯(防火も含めて)の初歩的な体制も訓練も行ってこなかった。この管理体制(最終的な管理責任者はだれなのかーそこも知りたいことの一つである)--そしてその責任の在り方こそ問題にすべきであり、学ぶべきこと、そして報道により注意を喚起すべき点である。報道が、なにか見る人の心に訴えるようなものになろうとするのは分かるが、同時に報道は客観的でかつ分析的な面もあわせ持つべきだ。今回の件について、NHKテレビなどで、このような点も併せて報道されれば、全国にある様々な同様な施設管理者にも十分な教訓となり、何らかの改善策が検討される契機にもなるはずだ。

この相模原の施設も、結局は、なにか取り壊すというような方向で検討されているようであるがが、こうして取り壊して、すっきりし、そしてそのうち感情も収まってしまったら、やがて忘れられてしまうと言う事になる事を恐れる。

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